ALB AUGUST 2023 (JAPAN EDITION)

9 ASIAN LEGAL BUSINESS – JAPAN E-MAGAZINE WWW.LEGALBUSINESSONLINE.COM 産国になる可能性を秘めており、日本に とっては、短期的にも中長期的にも、重 要な投資先なのです。気候変動に関して は、化石燃料を使った発電に対しての圧 力は非常に強くなっています。私共は、 オーストラリアから日本へのエネルギー 供給が、新エネルギー、とりわけアンモ ニアと水素に移行すると予想していま す」とメンスキ弁護士は見通しを語る。 ハーバードスミスフリーヒルズのパ ートナーであるイアン・ウィリアムズ弁 護士とダミエン・ロバーツ弁護士も、同 様の見解を示す。「オーストラリアは、伝 統的な化石燃料とグリーン・エネルギ ーの両方において最も先進的な法務 市場の1つ」と両弁護士は話し、「日本 は、将来のエネルギー安全保障のため に、再生可能エネルギー、CO2回収貯蔵 (CCS/CCUS)、ブルー水素(天然ガス や石炭などから取り出された水素のこ と。水素の製造工程でCO2が排出され るが、回収・貯蔵することで排出を実質 ゼロとみなす)、グリーン水素、アンモニ ア、メタノールなど、あらゆるエネルギー 源を検討しています。こうした動きはす べて、オーストラリアが日本にとって信 頼できる確かなエネルギー供給国であ り続けることができる立場にあることを 意味しているのです」と説明する。 上記のような理由により、日本の 投資家が関心を寄せる案件として、ウ ィリアムズ弁護士とロバーツ弁護士 は、LNG、太陽光および風力といった 再生可能エネルギー、オーストラリアが 産する希少な鉱物とそれを使ったEVや 家庭用の大容量電池、グリーンな水素 およびアンモニアとメタノール、CCS/ CCUS、これらのプロジェクトに対する プロジェクト・ファイナンスの機会、を挙 げる。 過去10年間、豪州はプロジェクトフ ァイナンス市場では常に世界のトップ3 に入っていた。3メガバンクを中心とする 日本の金融機関は、ファイナンスの組成 段階およびシンジケーションの双方で再 生可能エネルギー・プロジェクト等への ファイナンスを大幅に増加させている。 天然資源だけではない ところで、オーストラリアは資源 だけの国ではない。ここは、テクノ ロジー開発国やイノベーションの 中心地としても知られるようにな りつつあると、ウィリアムズ弁護 士とロバーツ弁護士は話す。例え ば、Atlassian、WiseTech、Acconex などのソフトウェア企業や、Afterpay、L inktree、Canva、Airwallex、Realest ate.com.au、Seek、Carsales、MYOB などのユニコーン企業の成功は、 オーストラリアのテクノロジー市 場の信頼性を高める一因となっ ているという。これに触発されて か、Alibaba、Slack、Square、GoPro などの世界的なテクノロジー企業も、最 近、オーストラリアに進出している。 日本が関わる注目を集めた近年の M&A案件としては、第一生命の豪州子 会社による、9億オーストラリアドル($6 億)豪ウエストパック銀行グループの生 命保険会社ウエストパック・ライフの買 収完了、三井物産による森林ファンド会 社ニューフォレスツの持ち分引き上げお よび野村ホールディングスによる新たな 持ち分取得等が挙げられる。 その他、丸紅のインフラファンドによ るロイヤルアデレート病院に関するサス テナビリティローン(5億オーストラリア ドル)契約の締結や、トヨタ自動車子会 社とメルボルン大学の協調型高度道路 交通システム関連の技術研究、日立レ ールのクイーンズランド州からの新世代 鉄道車両向け自動制御システム受注(1 億700万オーストラリアドル)等、日本と オーストラリアの協業はエネルギー分 野以外でも花盛りだ。 「消費財、小売、不動産およびサー ビス業における投資を通じてのセクタ ー多様化は、エネルギー移行の基礎固 めが進むにつれて加速化する。特に日 本の総合商社は炭素集約型資産をも はや戦略的とは見なしておらず売却を 進め、第三次産業に再投資している。高 価値製品・サービスの需要があるシン ガポールや香港と同様に、シドニーお よびメルボルンは高級品市場としての 認識が高まっている」と、ハーバードス ミスフリーヒルズのレポートは述べて いる。 Image: Adam Calaitzis/Shutterstock.com

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