ALB DECEMBER 2023 (JAPAN EDITION)

7 ASIAN LEGAL BUSINESS – JAPAN E-MAGAZINE WWW.LEGALBUSINESSONLINE.COM new office abroad while conducting client works has been a challenge,” says Atsumi. “We will start with a small office with three partners in charge of Europe, but if the demand for our office grows, we do not rule out the possibility of expanding our presence.” Albeit not without obstacles, Miura & Partners is convinced that the decision to launch in London is a strategic move that not only allows the firm to serve European clients and Japanese investors on the ground, but also burnish the firm’s reputation back home. “Advertising our quality service to potential clients abroad is one of the challenges we are facing. With a physical presence in the UK, it will become much easier to reach out to the clients, which will be a major advantage against our competitors in Japan,” says Atsumi. 日本のアウトバウンド投資は順調 に続いており、欧州が主要な投資先とな っている。これは日本企業が欧州での M&Aによる利益拡大を目指しているた めだ。 2023年だけでも、多くの欧州関連 のM&Aが行われた。まず、三井物産が食 品素材の製造販売事業会社ニュートリ ノヴァ・ネザーランドの株式70%を4億 7,250万ドルでセラニーズから取得。ゼ ンショーホールディングスが、英国を本 拠地とするレストランチェーン、スノーフ ォックス・グループを6億2,100万ドルで 買収。そして日本最大の発電会社JERA が、ベルギーの大手洋上風力発電事業 者であるパークウィンドを17億ドルで買 収している。 昨今の日本から欧州へのアウトバ ウンド投資の目覚ましい増加に伴い、 日本の法律事務所による欧州進出が注 目を集めている。アンダーソン・毛利・友 常法律事務所 外国法共同事業(AMT) は、欧州の第1号拠点であるロンドン・ オフィスの開設に続き、来年初旬にはブ リュッセルに新オフィスを開設する予定 だ。AMTは、欧州を「日系クライアントの 戦略的事業・投資対象」と位置づけ、日 本も「欧州ビジネスにとってのアジアに おける重要な法域」としている。 「ロンドンとブリュッセルは、欧州 に展開する国際法律事務所にとって鍵 となる重要な都市といえます。欧州連合 (EU)離脱後も金融センターとして重 要な役割を果たしているロンドンと、EU における法規制の『ハブ』であるブリュッ セルは、相互に補完しあうことで我々の 依頼者にとってのバリューを創出する関 係にあります。」 AMTは、日本とEUとの間の経済関 係強化を目的として2019年2月に発効 した経済連携協定(EPA)にも期待を寄 せる。 「コロナ禍の収束に伴う渡航制限 の解除や日欧経済連携協定の発効を受 けて、日本と欧州のマーケット間での交 流がさらに促進されることが期待され ます。」もっとも、規制環境が厳しい欧州 市場で新たな道を切り開くのは、決して 容易ではない。AMTも「もちろん、ロンド ンやブリュッセルでの事務所開設に際し ては、KYCやマネーロンダリング防止規 制の対象となり、手続面でも様々な対 応が必要となりましたし、今後もタスク が出てくるでしょう。」と回顧する。 同EPAは、特にフランスの輸出業者 にとって有益だろう。日本はフランスに とってEU域外では6番目の貿易相手国 だ。フランスの欧州・外務省によれば、す でに約8,000社のフランス企業が日本 に商品を輸出しており、その多くが初め て日本に輸出をする企業で、輸出額は 60億ユーロ(65億5,000万ドル)を超え るという。 TMI総合法律事務所でシニアパ ートナーを務める遠山友寛弁護士は、 「TMIはパリ事務所開設の前から、TMI の創設者である田中克郎弁護士が、大 手アパレルやフレグランスのブランド等 に、アウトバウンド(フランス向け)とイン バウンド(日本向け)の法務サービスを 提供してきた」と話す。TMIにとって、パ リオフィスは欧州ではロンドンに次いで 2番目、アジア以外では3番目の海外拠 点だ。 「私共が提供する法務サービスへ の需要は、新しいパリオフィスと東京の フレンチデスクの両方を通じて、今後も 継続的に増加していくとみています」と 遠山弁護士は話し、より広範な需要が 見込まれるアフリカ市場への進出も見 据えていると述べた。 三浦法律事務所もロンドンオフィス 開設の計画を発表しており、日本からの 投資先として人気の高いドイツ市場も カバーする。 ロンドンオフィスの共同代表を務め ることになる渥美雅之弁護士は、「ドイ ツとイギリスは、日本企業が活発に事 業展開する2大市場となるでしょう」と言 う。その裏付けとして、M&Aに代表され る欧州関連のインバウンド・アウトバウ ンド業務が「着実に増加している」こと を挙げた。また「日本の個人情報保護法 や資本市場の規制等、欧州企業が日本 で直面するコンプライアンス案件の分析 を依頼されることも少なくありません」 と言う。 TMIは、特にエネルギーと医療に照 準を合わせているという。遠山弁護士は この2つの業界について「世界的にも法 務サービスの新興領域であり、欧州はこ の分野においてサービスを提供する上 で重要な地域の1つです」と話す。 競争はなくとも、課題はある 「私共は、各地域で現地の法律事務 所と緊密に連携しながら、アウトバウン ド/インバウンド双方の面においてサー ビスを提供して参ります。」 また、AMTは、欧州オフィスは現 地法律事務所と競合するものではな く、70年以上にわたる欧州の現地法 律事務所との友好関係をさらに発展 させていくことを目的としていると強 調する。 「欧州に展開する他の日系法律事 務所とAMTとはアプローチが異なりま す。欧州の現地法律事務所と協働する AMTのアプローチこそが、日本のクライ アント、そして英国・欧州の法律事務所 の双方に、より多くの価値を提供できる と考えています。」 三浦法律事務所にとって海外オフィ スを開設することは決して易しいことで はないが、労力に見合う価値があると 考えている。「クライアント対応と並行し て海外オフィス開設の準備を進めるの は大変です」と渥美弁護士は言う。「最 初は欧州担当パートナー3人の小さな オフィスとして始めますが、需要が拡大 すれば、規模拡大する可能性も十分に あります」 そうした困難があってもロンドンオ フィス開設を決めたのは、欧州のクライ アントや日本の投資家に現地でサービ スを提供できるから、というだけではな く、日本での評価を高められるという戦 略的な意味合いもあるという。 「三浦法律事務所の質の高いサー ビスを海外の潜在的なクライアントにど う宣伝すべきかは、課題となっています。 英国に物理的な拠点があれば、クライ アントにリーチしやすくなりますし、それ が日本の競合事務所と比較して大きな 強みになるといえます」と渥美弁護士は 言う。

RkJQdWJsaXNoZXIy MjA0NzE4Mw==